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2015年、前クラブオーナーであるCristian Sodancaとその友人Petru Udreaが彼らの地元であるエゼリシュにサッカーチームを創設。小学校の教師であったSodancaが地元の若者に輝く機会を与え、エゼリシュの希望の星になりたい”という思いを抱き、エゼリシュ村長Ioan Rusu氏の力を借りゼロからのスタートを始めた。

創立から2年後の2017-2018シーズンには念願の5部リーグ優勝を果たし、2018‐2019シーズンには監督にAdrian Enasescを迎えリーガ3昇格という大きな目標を掲げた。公言通り、翌シーズンの2019-2020シーズンには昨シーズン王者で3連覇を狙う地元の強豪Vointa Lupacなどに勝利し、県リーグ(4部リーグ)を無敗で制覇。昇格プレイオフでも優勝候補のアラド県チャンピオンCS Victoria Zabraniとゴルジュ県チャンピオンStiinta Turceniを退けクラブ史上初、悲願のリーガ3参戦を決めた。

チーム創設5年での3部昇格は、エゼリシュのような村クラブとしては全国でも類を見ない快挙だった。

リーガに3昇格したエゼリシュにとって未知の領域である、2020-2021シーズン、チームは新たな監督としてLucian Dobreを迎えた。彼は元選手としてUEFAヨーロッパリーグなどを戦った豊富な実績があり、彼と彼のコーチングスタッフをチームに招聘したことはクラブにとって大きな投資であり、リーガ2昇格を現実のものにするという意思表示になった。

ルーマニア・リーガ3に参加するクラブの中には過去にヨーロッパの舞台で戦ったような古豪が存在する。4部リーグの時とは比べ物にならない程の予算・戦力・経験値を持ったチームと、エゼリシュのような出来て間もない村クラブが対等に戦うのは大きなチャレンジだった。

2020年、初めて挑戦するリーガ3に向けて準備を進めている中、世界中を新型コロナウイルスの脅威が襲った。ルーマニア国内においても被害が大きく、経済情勢の悪化、リーグ規模の縮小、無観客での試合開催などの理由により、今までエゼリシュを支えてきてくれたスポンサーたちが続々と撤退していきました。残ったのはメインスポンサーである村役場のみとなり、大幅な収入減によりクラブの存続が危ぶまれるという状況になっていた。

コロナ禍以前は、選手やチームスタッフへの給料が支払えないという問題は一度も起きなかった。しかし、スポンサーの相次ぐ撤退により、リーグ戦にかかる運営費や遠征費、リーグの規定により2週間に1回実施するのが義務となっていたPCR検査がクラブの財政を圧迫していたことが原因で数名の選手とコーチングスタッフに給料を支払うのがやっとという状況だった。

給料をもらっている選手やチームスタッフと給料をもらえていない選手たちの間にわだかまりが出来てしまい、チーム内の雰囲気が悪くなっていた。また、給料が支払われていない選手の中には練習を無断で欠席したり、試合でも一生懸命にプレーしないという選手もいた。

このままでは、主力の選手が他のチームに移籍してしまい、大幅な戦力ダウンに見舞われ、1シーズンでの4部リーグ降格ということも現実味を帯びていた。

メインスポンサーに手を挙げてくれるルーマニア国内の企業・団体はなく、さらに創設時から支えていてくれたエゼリシュ村からの金銭的支援も絶たれた。クラブ史上初のクラウドファンディングを始めることになる。このクラウドファウンディングにおいて胸スポンサーの権利を購入した、現オーナーの板東隼平に前オーナーからクラブの買い取りの打診があり交渉開始した。※このクラウドファンディングは日本国内、ルーマニア国内でも大きな話題を呼び目標金額に到達した。

前オーナーから板東隼平に対してクラブ買収に関する打診があり数週間の交渉の末、2021年2月27日、板東隼平が「ACS Progresul Ezeris」の保有権の100%を取得しルーマニア初の日本人クラブオーナーになる。新オーナーになった板東隼平からの資金援助もあり20/21シーズンのLIGA3はなんとか9位に滑り込んだ。その後、4部リーグのクラブとの残留をかけたプレーオフに挑み、1st legを敵地で迎え1−1で引き分けで終え、そして迎えた2nd leg。ホームでの久しぶりの観客入りの試合で3−0で勝利し、2試合合計4-1で勝利し無事残留を果たす。見事、昇格1年目のシーズンを乗り切り3部リーグに残留した。

迎えた21/22シーズン、リーグ開幕前のコパルーマニアではクラブ史上初の3回戦まで勝ち上がり、古豪CSM Resitaとの試合で惜しくも敗戦してしまうも、絶好のコンディションでプレシーズンを終える。

開幕後、5試合で3勝1分け1敗と好スタートを切ったものの、クラブ内で大きな問題が発覚した。原因を追求して行く過程で、不正に絡んでいた選手数人を解雇した。さらに、クラブに対して忠誠心のない選手を解雇し、シーズン途中に1からクラブを作り直すことになった。

その後、大きく勝点を取りこぼし、降格プレイアウトに挑むことになる。迎えた降格プレイアウトでも勝点を取りこぼす試合が何試合も重なり、最終節で降格をかけたAurul Brad戦に望む。一進一退の白熱した試合展開の末、最後の1プレーで決勝点を与え降格圏の9位に沈む。

降格が決まり落胆する選手とスタッフ。降格決定後、スタジアムに観戦に来ていたサッカー協会スタッフから「財政危機で消滅するクラブがいくつかあると思う。まだあきらめるな。」と、言われた。しかし、なかなかサッカー協会から3部残留の連絡がなく22/23シーズンのプレシーズンを迎える。そして開幕の1っヶ月前になりサッカー協会から3部参戦の招待状が届く。財政面での健全性と降格圏のクラブの中での上位だった成績が評価された。

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